プロの作曲家から見る、映画・ゲームにおけるトレーラー音楽の構造と作り方とは

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編集部注:本記事は、イギリスでゲーム音楽やTV番組の音楽制作に携わる、作曲家 Jonathan Wright 氏のウェブサイトに投稿された記事を、許可を得て編集部にて翻訳・加筆した記事です。


最近の10〜20年において、映画やゲームのトレーラー(宣伝動画)で用いられるトレーラー・ミュージック(トレーラー音楽)は、それ自体がジャンルとして定着してきました。

例えば、トレーラー音楽を専門に制作するTwo Steps from Hellは、トレーラー音楽のアルバムをiTunesでリリースしています。

トレーラー音楽は至る所で聴けますがが、それらはテレビ、ゲーム、映画に限って使用されます。結果的に、これらの楽曲に求められるクオリティは非常に高い物が要求されると言えます。

今回は、そんなトレーラー音楽の構造と作り方について考えていきましょう。

トレーラー音楽の楽曲的な構造

Vertical Composing(垂直方向の作曲)という言葉があります。これは、様々なトラックが積み重なる様子を説明したものです。要するに、音楽が進むにつれて様々な楽器や音が徐々に増えていくという意味です。

「垂直方向の作曲」はそれ自体が芸術です。ハンス・ジマーはこれをマスターしていると言っても良いでしょう。彼の曲は非常に壮大なサウンドですが、不協和音や濁りがなく、音楽的であり、周波数帯域もきれいにに満たされています。

トレーラー音楽には大きく分けて3つのセクションに分けることができます。

  • 導入部分……暗い空気をまといつつ、微妙なヒントやモチーフを提示する
  • 中間部分……たくさんのメロディでドラマティックな徐々に緊張感を演出していく。最初に作るべき部分。
  • フィナーレ……様々なトラックが一つに収束し、完全なメロディとして演奏される。ユニゾンする楽器が壮大さを演出する。
あるトレーラーの例

あるトレーラーの波形の例。上記の3つのセクションから成り立ち、最後に静かにエンディングがある

この構造化は便利です。しかし、必ずしも守る必要はありません。この構造にとらわれず曲を作り、例えばセクション間でギャップを作った場合には、異なる部分を繋ぎ合わせてそれが1つのトレーラーになるかもしれません。それぞれのセクションを別個の曲として捉えてみることも必要です。

セクションの長さに制約はありません。しかし、1曲の長さが2分30秒程度になることを考えると、各セクションは30秒以上あることが望ましいといえます。

中間部分とフィナーレの間にパーカッションのヒットを入れてみたり、静かな奏法のパートを入れてみたりすることで、この構造を変化させることもできます。

私の経験上、曲の終わりはコールド・エンディング、すなわち壮大なフィナーレを迎え、完全に終止し、その後何も聞こえなくなるものが好まれます。

とはいえ、時折「もう少し穏やかな終わり方にしてほしい」という要望を受けることもあります。そういった場合には、コールド・エンディングと同じく壮大なクライマックスに到達した後、少し静かめの演奏を行うことで、クレジットロールに必要な時間を稼ぎます。

編集部注:例えばTwo Steps From Hellの上記の曲は、ここでいう構造によく当てはまった曲と言えますね。

トレーラー音楽における楽器の構成

トレーラー音楽の「壮大さ」について考えてみましょう。トレーラー音楽は大編成のパーカッション、強い低音(オーケストラ+シンセの合せ技)、ストリングス、金管楽器で編成されています。

ハイブリッドなトレーラー音楽では、多くの効果音やエフェクト、シンセサイザーが楽曲に含まれるでしょう。こういったオーケストラ以外の音色は、オーケストラよりも前に出ます。

コーラスは曲の終わりに使われることが多いです。しかし、使いすぎると安っぽくなってしまう危険性もあるため、最近では使われる頻度が少なくなっています。

トレーラー音楽は「音の壁」ではありません。冒頭に紹介したTwo Steps from Hellも、様々なジャンルの音楽を作っており、時には(効果音やシンセを使わない)伝統的なオーケストラアレンジも行います。Two Steps from Hellを知らない方でも、彼らの音楽を耳にしたことは少なからずあるはずです。

最後に:楽曲を埋もれさせないための「独自性」

ここまでで、トレーラー音楽のルールについて説明してきましたが、忘れてはいけないこともあります。

それは独自性を出すということ。

世の中に大量のトレーラー音楽が溢れている以上、これらの曲はどうしても似たり寄ったりになってしまいます。したがって、あなたが曲を作る場合には、あなた独自のものを曲中に入れることが重要になってきます。

基本的なルールさえ知っていれば、少しくらい遊んだって問題ありません。今までで聞いたことがない楽器を持ち出してみましょう。もしくは、何らかの方法でリスナーの予想を裏切ってみてください。

何らかの方法で独自性を出すことは、あなたの楽曲をその他大勢の中に埋もれさせないための最も単純な方法といえるでしょう。

このガイドがあなたに有益でありますように。

※本記事は、Jonathan Wright Musicの記事 Tips for Composing Trailer Music を許可を得て翻訳・加筆・掲載しています。訳・編集:神乃木リュウイチ