デジタル原稿の時代だからこそ伝えたい、アナログ原稿制作の魅力

ペン入れの様子(筆者撮影)
ペン入れの様子(筆者撮影)
この記事は、サークル「にしきへび」代表のたこぱいそんさんに執筆していただきました。

「マンガを書くとき、なぜアナログで描いているのですか?」といろいろな人に質問されることがあります。
アナログは昔のやり方で面倒くさい。今はデジタル全盛期です。にも関わらず、私は時代遅れなアナログ原稿をメインに本を書き続けています。
それはなぜなのか、アナログとデジタルの違いは一体何なのか、私なりの考えを書いてみたいと思います。

なぜデジタルでやらないのか

よく聞かれます。「なんでそんな面倒なことをわざわざしてるの?」と。

これは、私自身が、どうにもデジタルで作画ができないというのが一番の理由です(笑)。

今は板タブとSurfaceを持っているのですが、色塗りはある程度できても線画が致命的で……。

あとはスピードでしょうか。しゃっしゃと手早く描いていくのが好きなので、マシンスペックなどの環境によっては、もたついたり強制終了してしまうことのあるデジタルは、性分的に「私に向いていないなぁ」とよく思います。

個人的なこだわりの部分ですが、私は斜線で濃淡を表現するのが好きなので、細かな線をたくさん密度を高く描いていくんですね。その作業というのは、結構デジタルの不得意分野なようで、うまくいかないんですよね。

まぁ一言で言ってしまうと「自分にはアナログが合っている」ですね。

アナログだと面倒に感じることや不便なこと

墨とペンで原稿を描いています。

墨とペンで原稿を描いています。

とはいえ、アナログには面倒なこともたくさんあります。

一番大きいのは、ご存知のとおり「修正が効かない」ということです。

描き損じなど小さなものはホワイトで修正できたりしますが、大きなミスをしてしまうと、そのページやそのコマなどを丸々描き直すことになります。

また、あとで「やっぱりこういう構図がよかったな」とか「もうちょっとキャラが右側の方がよかったな」とか思っても、もう直せないんですよね。

もうひとつは、「データに変換する」ことです。

本を出すときはデータ入稿の方式を採っているのですが、そのためにはスキャン+補正+文字入れ等の「デジタルデータ化」の手順を踏まなければなりません。

昔はアナログ原稿を近くの印刷所に持ち込めば、あとは印刷所がよしなにやってくれるものでした。しかし、今は印刷所も競争が激しく、「遠くの印刷所ならとても安く仕上がる」といった場合が多々あります。同人原稿の作業スケジュールは往々にして切羽詰っているものですから、「少しでも短納期で」かつ「少しでも低価格で」という印刷所を探していると、どうしても遠方でデータ入稿の印刷所を使うことが多いのです。

とはいえ、この「デジタルデータ化」の作業は、かなり手間なんですね。例えば、24pの本でのこの工程を行うとなると、だいたいいつも丸8時間くらいはかかってしまいますね。

アナログ原稿でありがちなミス

アナログ原稿にはミスもつきものです。それも、アナログ原稿特有のミスです。

よくあるミスは「インクを擦ってしまう」ことです。

私は、付けペンと墨汁で描いているのですが、両方とも液体ですので、描いてすぐの時は「紙の上に墨が乗っている」状態なんですね。

まだ乾いていないベタ塗りの部分。ここを擦ると残念なことになります……。

まだ乾いていないベタ塗り(墨)の部分。ここを擦ると残念なことになります……。

その時に他の線を引こうと手を動かすと、生乾きの墨が手についてビッと擦れてしまいます。あとは、乾いてない時に消しゴムをかけたりするのも同じですね。

細かなところを描いている時だと修正も難しいので悲惨ですね。

一番悲しくなるミスは「墨汁をひっくり返す」ことです。私は今までに2~3度しかやったことがないですが、絶望ですね……。 全てが真っ黒になりますし、洗い流そうとしても描いた線も一緒に流れてしまいますし……。 激しくやる気が削がれます。

デジタルデータ化する時に起こるアナログ特有のミスもあります。

スキャン時のスキャナーについた汚れや消しかすなどがそのままになってしまったり、原稿用紙の薄い水色のガイド線が消えずに残ってしまったり……。

入稿が終わって一安心、そして届いた本にそのミスを見つけちゃったりしたときは、これまた絶望ですね……。