クラブミュージック、映画音楽モノ、ポップス・・・
音楽制作でソフトウェアシンセサイザー(以下ソフトシンセ)を使用している方はとても多いと思います。
今日までにもフリーシェア問わず多彩なソフトが各メーカーから生み出されてきましたが、今回はその中でも「Serum」という、Xfer Recordsから2014年にリリースされた比較的新しいソフトシンセを紹介&レビューしたいと思います。
基本情報
製品ページはこちら→ https://www.xferrecords.com/products/serum
値段は189.00ドル。VST、AU、AAXに32、64bit版がありWindowsとOS Xどちらにも対応しています。
シリアルナンバーの入力のみでアクティベーションできるので、破損が怖いドングルなどを必要としません。
Serumのここがスゴい! 〜ウェーブテーブル機能編〜
いわゆるWavetable Synthesizerとよばれる短い波形の集合体を利用するタイプのシンセサイザーで、仕組み的にはNative Instrumentsの「Massive」やWavesの「Codex」が似た機能を持っています。
Advanced Wavetable Synthesizerと銘打たれたこのシンセは、はじめから144以上のWavetableが同梱しており、また自前で用意したものを追加・使用することもできます!
1つのWavetableをつまみでこねくり回したりするだけでも多彩な音を鳴らすことができるので、音作りが楽しい!
サウンドレビュー: Initの状態からWavetableのEvol Sweepを読み込みWT Posを動かした音
この点で、シンプルなサウンドからうねりの効いた飛び道具的サウンドまでをカバーすることができています。
読み込むとドーンとOSC部分に波形が表示され、視覚性もいいですね。
Serumのここがスゴい! 〜UI編〜
見た目がいいシンセは立ち上げておくだけで気分がウキウキしてきませんか?
Serumは落ち着いた色を基調としつつも、発声時に動き出すOSCやフィルターの波形やカラフルなFX部分がとても綺麗です。
こちらが波形が実際に動いている様子です。
Serumのここがスゴい! 〜サウンド・プリセット編〜
「色々できて見た目がいいのは分かったけど肝心の音は?」
ーはい、Serumはとてもいい音を出してくれます!
450以上あるファクトリープリセットにはAdam Szabo、Evol IntentのメンバーやArt of Fightersなど幅広いジャンルのアーティストが手がけたものもあり、これだけでも使える音がたくさんあります。
自身で作るもよし、プリセットをそのまま使うのもよし。プリセットのWavetableを入れ替えたりするだけでもバリエーションを持たせることができるので、例えば複雑なLFOなどを1つ構築できれば何種類の音も作り上げることが可能です。
サウンドレビュー: プリセット「BA NuSweep [ASL]」
ドラムンベースなどで耳にするうねりの効いたベース。
Serumはこの手のサウンドが特に突出しているように感じます。
マクロコントロールを動かすだけですぐそれっぽい音が鳴らせますよ。
サウンドレビュー:プリセット「LD Titan[CFA]」
トランス系のリードをワンフレーズ。
ベースに限らず派手な音が充実しているので、EDM的アプローチを歌ものや劇伴に使いたい方にもオススメできます。
サウンドレビュー: サブベース
地味ですが特にクラブミュージックでは曲の仕上がりに関わってくるサブベース。このサウンドではOSC AのWavetableにDist Sub Dskpercを読み込ませてWT Posを動かしたものです。
OSCとは別にサブベースのための部分もあるので低音まで自分の理想に合わせて作り込めます。
サウンドレビュー: プリセットを加工したリードサウンド
SY Hypersaw Layered [SD]を元に、FXでディメンションエクスパンダーとコンプ、エンベロープでアタックを強調するなどの調整でユーロビートのリードを作ってみました。
このFX部分がなかなか便利で、各エフェクトのかかる順番の入れ替えなどかゆいところにも手が届いています。
サウンドレビュー: コンプレクストロ系のフレーズ
今度は複数のプリセットを使ってコンプレクストロ系のフレーズを組み立ててみました。
ファクトリープリセットの時点でこれだけ鳴らせます!
使用プリセットなど
BA Hoo [SN]
BA Hoo [SN]
BA BitterBot [LCV]
BA Razor [CFA]
BA Snailed [SN]
BA Sawtoooooth 2[FN]
BA Drill [CFA]
SY Hypersaw Basic [SD]
(サブベースのみInitからOSC AにDist Sub Dskpercを読み込みWT POSを1に設定+SUBの円形波)
Serumだけを使って作った曲の例:UKハードコア<音量注意>
プリセットを微調整しつつ、リードなども交えてUKハードコア的サウンド
原曲: Darren Styles – Satellite(update)
メインのベース音やリードはもっと作りこみの必要がありますが、まあまあなところまでは作れちゃうんじゃないでしょうか。
使用プリセットなど
SY Hypersaw Basic [SD] -リード1
SY Hypersaw Basic [SD] -リード2
LD Paradigm Drift [SN] – リード3
PL Tinkerbell [DRK] – プラック
BA Complextro 1[CFA] -ベース1(メイン)
(サブベースのみInitからOSC AにDist Sub Dskpercを読み込みWT POSを1に設定+SUBの円形波)
Serumの欠点
負荷が重め。
新しめのシンセなどではよく見られる傾向ですが、機能性などを追求する結果として少し重めです。
GLOBALでQUALITYを1×にする、OSCのユニゾンを下げるなど対策はありますが音質を下げないためにもなるべくSSDやスペックの良いパソコンを用意したいですね。
アンプコントロールがない。
シンセサイザーの基本でもあるアンプコントロールがエンベロープ1に統合されているので、はじめての操作では少し戸惑うかもしれません。
その他
学割での購入が可能
学生さんの場合、Contactから申請すれば学割で30%オフにできます。セールはあまりないので積極的に申請しましょう。
1) educational discountで購入したい旨のメッセージ
2) 在学証明書などの写しを添付
を用意するべし。
英語が不安な方
今年のはじめに、国内のダウンロード販売サイトSONICWIREにて取り扱いが開始されました。日本語のサポートやマニュアルが欲しい方や国外での買い物にどうしても抵抗がある方にはこちらをオススメしておきます。
http://sonicwire.com/product/99927
プリセット集
筆者はSerumではあまりプリセット集を探していませんが、トラックメイカーのVirtual Riotが手がけたこちらなどはダブステップ周辺のベースミュージックを作りたい人にとって強い味方になるでしょう。
https://primeloops.com/virtual-riot-serum-presets.html
まとめ
いかがだったでしょうか。まとめると、
- 今風のシンセサウンドをすぐ手に入れられる
- カッコいい
- 音の作りこみがいがある
のがSerumの強みと言えるでしょう。
この記事を通して、少しでもこのソフトシンセの魅力を伝えることができていればと思います。
それでは最後に、これは1.10b1 beta版アップデートで実装された画像ファイル(png)からWavetableを生成してくれる機能で、この記事のキャッチ画像にもなっている、しろたんとEX NOTESのアイコンを読み込んでみた画像で締めたいと思います。
音は微妙でした。