こんにちは、神乃木です。
皆さんは、アクション映画やゲーム、トレーラーなどで使われている音楽は好きですか?
音楽作っている人ならご存知かと思いますが、特に映画などで使われる映画音楽は、日本語では「劇伴(げきばん)」、英語だとFilm Scoreと言われ、独特のジャンルとして定着しています。
昔は映画音楽といえばフルオーケストラの荘厳なサウンドが主流でしたが、2003年〜2005年頃を境に電子音楽との融合が進み、現在ではEDMとオーケストラを掛け合わせたようなサウンドが主流になってきています。
今回は、そんな映画音楽っぽい音楽を作る場合のマストバイといえるブランド「ProjectSAM」について、実際私が使っている「Symphobia」と「Orchetral Essentials」のレビューも混ぜながらお話したいと思います。
ProjectSAMとは
ProjectSAMは、コンピュータミュージックが本格的に現場に投入されるようになった2000年頃に設立されたオランダのメーカーです。
DTMをやっている人であれば「Symphobia」の名前を一度や二度は聞いたことがあるかもしれません。
ProjectSAMの「Symphobia」シリーズは同社の中核ともいえるシリーズで、2000年初頭の登場以来、バージョンアップと値下げを繰り返してきました。
今ではSymphobia以外にも、Orchetral Essentials、True Strikesといった製品もリリースしていますが、やはりProjectSAM=Symphobiaと感じる人も少なくないと思います。
ProjectSAMの特徴と支持される理由
全般的にいえることですが、ProjectSAMの製品は、映画音楽の現場で必要とされるものを的確に詰め込んでいます。
映画音楽の現場というのは過酷です。特にスピード感が非常に重要視されており、一週間でフルオケ15曲作曲なんてこともザラにあります。
こういったスピード感で作業を進めるにあたり、ProjectSAMのプラグインは非常に重宝します。
その理由は、「一音鳴らしただけでオーケストラが鳴る」からです。
本来オーケストラは大量のパートから成り立っており、1つ1つのパートを丁寧に作っているととてもではないですが時間が足りません。
ましてや、全体を鳴らしてみてOKとするかNGとするかも不明なアイデア出しの段階で、細かい打ち込みを行っていくには無理があります。
劇伴作曲家の方の中には頭の中でオーケストラを鳴らしていきなり譜面を作ってしまう天才もいますが、そういった天才ではない限り、普通は「手早く全体を鳴らしてみて何となく曲の雰囲気がわかるようにする」ことが、作業を進める上で必須になってきます。
ProjectSAMのプラグインは、その「何となく曲の雰囲気がわかるようにする」ためには必要十分な機能を備えています。
なにしろ、マルチを読んで鍵盤押せばオーケストラがドーンと鳴るからです。
これこそが、古くから劇伴作曲家の間で同社のプラグインが定番的に支持される理由でしょう。
マルチを読んで鍵盤押せばオーケストラがドーン
ではその「マルチを読んで鍵盤押せばオーケストラがドーンと鳴る」とはどういう意味か、サンプルも交えて解説していきます。
まずは以下のサンプルをどうぞ。これは、同社のプラグイン「Symphobia」(1)で、「101st Airborne」というマルチをKontaktで読み込み、Amをそれらしく鳴らしてみたものです。
トラック数は以下の通り1つだけ。
これだけで、低音のコンバスやチューバ、中音部のチェロ・ヴィオラ・トロンボーン等、高音部のバイオリン〜木管系までがいい具合にアンサンブルされて聞こえてきます。
打ち込みに所要した時間は約5分。これをもし各楽器ごとに分けて打ち込もうとすると、この数倍は覚悟しておかねばなりません。偉大なことです。
たったこれだけのノートの数でこの音が出るので、コードやハーモナイズを変更するときも楽チンです。パートごとにエディットして、音域やらエクスプレッションやらを気にする必要もありません。
そもそも、単純に鍵盤を触っているだけでEpicなサウンドが流れてきて、とても気持ちが良くなります(これ大事)。
これがSymphobiaシリーズの大きな特徴で、後述する別プロダクトの「Orchestral Essentials」でも便利なマルチパッチは色々用意されています。
スクリーンショット撮ってライブラリが古いままだったことを思い出すなど……アップデートしておきましょうかね。。プラグインのアップデートを全部一括してくれるソフトが欲しいです。
ProjectSAMのラインナップ
2016年11月現在、ProjectSAMでは大きく以下のようなシリーズが発売されています。
- Symphobiaシリーズ
- Orchestral Essentialsシリーズ
- Coloursシリーズ
- True Strikeシリーズ
この他にもSwing!なんていう番外編もいますが、完全に番外編なので無視してしまっていいでしょう。
ProjectSAMを語る上では、SymphobiaとOrchestral Essentialsについてしっかり押さえておきたいところです。
Colours、True Strikesもデモを聞く限りでは良い音源のようですが、筆者は持っていないので今回は紹介から外します。
Sympobiaシリーズのレビュー
Symphobiaシリーズは合計で3つのプロダクトがあります。
1は基本となるパッケージで、これがあればとりあえずSymphobiaの旨味を味わうことができます。
2はエフェクトが強化されたパッケージで、ホラー映画に出てくるようなサウンドがたくさん収録されています。弦のレガートなども収録されています。
3はLuminaという相性がついており、ファンタジー系の音楽を意識したサンプルが多数収録されています。
1,2,3全部を買うとなると結構な出費になりますが、とりあえず1があるだけでもだいぶ違う筈です。筆者は1だけ買いました。
Orchestral Essentialsのレビュー
Orchestral Essentialsは、Symphobiaシリーズのサンプルから一部を抜き出しつつ新規パッチを追加したサンプルです。
よく「Symphobiaの廉価版」と言われますが、そんなことはありません。そもそもSymphobiaにない音が収録されていることもありますし、なにより「Essentials」を謳っているだけあって、オーケストラを作るのに必要な音が単音でもそれなりに収録されています。
Symphobiaはアンサンブルパッチが殆どなのに対し、Orchetral Essentialsは単音サンプルもそれなりにあって重宝します。(オーケストラチャイムがないのは結構痛いですが……そのためだけにQLSOを使ったりすることもあるので悲しい限りです)
Orchestral Essentialsも1/2の構成となっており、1が基本パック、2は拡張パックで、2はエフェクト、ソロ楽器、レガート奏法などが収録されています。
筆者は1だけ持っていますが、他プロダクトのデモ等を聞いていると、「お、このパッチはSymphobia2のものかな?」と思えるような音色のミックスがされている箇所を発見することができます。
SymphobiaとOrchestral Essentialsの比較
まず、費用面でみてみると、Symphobiaの価格が$579なのに対してOrchestral Essentialsが$349なので、Orchestral Essentialsのコストパフォーマンスはかなり優秀な部類に入るでしょう。
音の重厚さではSymphobiaの方が確かに上回っているのですが、他のプラグインも使いますし、取り回しとしてはOEのほうが優秀だな、というのが私の感覚です。一通りのプラグインが揃っていて、弦の不気味な駆け上がり等のエフェクトも欲しい場合には有りでしょうか。
Symphobiaは特に2のレガートを売りにしていますが、正直レガートに関してはProjectSAMじゃなくても専門音源を使えば良い(+そもそも生には勝てない)と思っているので、Symphobiaにあまりメリットはないように思います。ただしSymphobia3:LuminaはProjectSAMの他の音源とも被らないラインナップなので、こちらはあって良いと感じます。
筆者はSymphobiaを買った後にOrchestral Essentialsを買いましたが、正直いってOrchestral Essentialsだけで十分な気が結構しています。というよりもOEの1と2を買えば良かった……。
ProjectSAMのセール時期、買い方
さて、そんなProjectSAMですが、セール時期についてはどうでしょうか。
ここまで2年程度のセール傾向を見る限り、セールは「11月末のブラックフライデーのみ」と考えておいたほうがよさそうです。
少し前まではハロウィンセール等もあったようですが、2014年以降はブラックフライデーのみ確認できています。
割引率はSymphobiaで33%(2015年実績)とかなり高め。2016年も30%以上の割引は期待してもいいでしょう。現在の正規価格は$579ですので、$400前後で買えることになります。
購入についてはJRRshopで買うことが定番です。JRRshopは常時カートに入れて10%引きをやっているため、セールと合わせれば300ドル台で買えることになります。
日本語サポートが欲しい場合はAmazonのRockOnなどで買うのが良いかと思います。
まとめ
以上、ProjectSAMのプラグイン紹介ということで、今回はSymphobiaとOrchestral Essentialsをメインにご紹介させていただきました。
音楽的なレビューとしては、Symphobia、Orchetral Essentials共に、以前執筆した記事「この曲を作るのに何が必要か、プラグインと金額と作例をズバリお教えします」で触れていますので、こちらも合わせて読んでいただけるとイメージが掴めるかもしれません。
オーケストラにかぎらず、打ち込みにはとにかく労力がかかります。そういった労力を少しでも軽減して、本来のクリエイティブな作業に集中させてくれるプラグインは非常に有用です。
Symphobiaは割引後の価格でも400ドル、OEでも300ドル程度と決して安くはない出費ですが、それと引き換えに得られるカッコイイサウンドはきっと満足感をもたらしてくれるはずです。
ちなみに、本当はデモソング的なものも書き下ろそうかと思ったのですが、作り込むのであれば他の音源も欲しくなってしまい、若干中途半端な仕上がりになっているので本文中での紹介はやめておきました。気になる方はこちらのリンクから。
次回のレビューも、なるだけ「ラクをできる」プラグインについて紹介していきたいと思います。ではでは。