リスナー目線で考える、アマチュア・同人音楽を聴く意味、作る意味

プロの作った商業音楽と、アマチュアの作った同人音楽。

プロの作った商業音楽は一定のクオリティが担保されている一方で、同人音楽にはそれがない。

アマチュアが作った音楽は誰が聴くのか? 作る意味はあるのか? 今回はそんな疑問をテーマに、同人音楽レビュー誌「R3 Magazine」を発行するタチやん氏に記事を寄稿していただいた。


この記事は、同人・アマチュア音楽レビュー同人誌「R3 Magazine」からの寄稿記事です。

音楽の世界、一定の完成度の高さを保証されているプロの作品・商業音楽があるのに、あえてアマチュアのもの・同人音楽を聴くリスナーも増えてきています。昨今では本当に色々なもので溢れていて勢いも増してきていますね。

そんな中、「なぜわざわざ質の保証がされていないアマチュア・同人音楽を聴くのか?」という単純に質の面だけで言えば、言い方を悪くすればコストパフォーマンスの悪そうな選択肢を選ぶ意義について、リスナーのひとりとしてその理由を少し語りたいと思います。

1. 同人でしかできないような主旨・仕掛けがある

リリースされる作品の主旨も『飯テロ』『一人で演るオーケストラ』『ガチャを回して楽曲をゲット』『音楽のカードゲーム化』など字面だけ見て食指をそそられるものから一見わけのわからないもの、本当にこの企画を通して大丈夫なのか?みたいなものまで非常に多様化しています。

企画段階で「これはもはや大喜利みたいなものなのでは?」と思われるものもあったりします。こういった仕掛けが楽しめるのは現状、商業では不可能です。こういった仕掛けをする企画主の方や、それに気軽に賛同して集まれるフットワークの軽さも同人のフィールドならではでしょう。ぜひ今後も面白い企画を打ち出して界隈を賑わせて欲しいものです。

筆者の戦利品の一部です。この中からいくつかレビューを書いたりもしています。

筆者の戦利品の一部です。この中からいくつかレビューを書いたりもしています。

2. 奏でるサウンドのジャンルのニッチさ

同人音楽からメジャーに飛び出していく人も増えてきました。例えば既に解散してしまいましたがAsrielは今でもメジャーでは見られない『ゴシック・クラシカルなハードロックの女性ボーカル』というものを出していました。SoundHorizonのやっていた『物語音楽』も商業では中々実現できなかったジャンルでしたよね。あとはチップチューンや、あえて邦人の演るような他国の民族音楽とかブラックメタルとか

そういったニッチなサウンドをより深く掘り下げようとしていくと、個人レベルだからこそ自由度の高いサウンドを演れる同人音楽というフィールドに辿り着くんですよね。商業に出すほど大衆に求められていない・向いていないサウンドを掘り当てようとするなら同人音楽を探してみたほうが早かったりする場合もあるくらいです。

筆者が前回(2016年春M3)で手に入れた戦利品の総数。おかげでしばらくの間はBGMからガッツリ聴く音楽まで困りませんでした。

筆者が前回(2016年春M3)で手に入れた戦利品の総数は合計479曲。おかげでしばらくの間はBGMからガッツリ聴く音楽まで困りませんでした。

3. 尖った個性的なサウンドを求めて

リスナーの中で『ボカロ聴き専』という言葉が出てきたり、そのボカロPの作風が好きで追いかけているという方も少なくないのではないでしょうか。これはボカロに限った話ではないのは言うまでもなく、他の人には出そうとしても出せない『個性』というものが誰しもあります。

これには今まで聴いてきた音楽が土壌となってそれに現れてくるのですが、コレを他人がわざわざトレースするなんていうことはほぼありません。それなら自分の個性を磨いて出したほうが手っ取り早いし、なにより自身のアーティスティックさを打ち出せるからです。同人音楽を作っている方々で『◯◯っぽいサウンドをやってみたい!』という人もたまに見かけましたが、最終的にはその人自身の個性がにじみ出るメロディやグルーヴ感を大切にしているので、ある意味ではそこが最後の砦でもあり、武器であり、それこそが作品に対して抱かれる感想・感情であるのだろうなと思います。

同人音楽を選ぶ理由、まとめ

いかがでしたか。大きく3つの理由を挙げてみました。

  • 企画やその仕掛けの面白さ
  • 商業音楽にないニッチなジャンルを掘り下げる
  • そのアーティストの個性が好きだ!

例えばコンピアルバムに参加される常連の方々はその1の理由が面白くて参加されるでしょうし、またこれで耳を通す作品も多いかと思います。いちリスナーとしては、その2やその3の理由が(個人的には特に3の方ですね)多いかと思われます。

筆者のタンスの一部はCDの収納となっています。この段は同人CDです。同人音楽以外にもインディーズバンドのCDが眠っていたりします。もういないサークル・バンドもありますね……

筆者のタンスの一部はCDの収納となっています。この段は同人CDです。同人音楽以外にもインディーズバンドのCDが眠っていたりします。もういないサークル・バンドもありますね……

最後に、同人作家にエールを

同人音楽をやっている方々は、是非この個性を磨き続けてあなたにしか出せないサウンドを打ち出してください。きっとリスナーもついてくるはずです。

企画主の方々、企画の取りまとめやアイデア出し・裏方作業などお疲れ様です。いつもリスナーのひとりとして楽しませていただいてます。

同人作家の方々は、どうか「別に俺が作らなくてもいいじゃん」「プロの方が上手いじゃん」といった悩みなど吹き飛ばしてこれからも作品を作り続けてください。今後の同人音楽ひいては音楽の世界そのものがどうなるか、楽しみです。

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