こんにちは、こぶだしです。
趣味で漫画を描いている人であれば、一度は「商業漫画の連載作家になりたい!」と思ったことがあると思います。
かくいう私もその一人だったのですが、不思議なご縁により、一人の同人作家から商業作家へと転身することになりました。
現在私は、KADOKAWA(メディアファクトリーブランド)様から刊行されている商業誌「月刊コミックアライブ」にて「レッチリ」というギャグ漫画を連載しております。
そろそろ連載開始から半年になりますが、最近「連載作家ってどうなの?」といろいろな質問をされることが多くなってきました。
そういうわけで今回は、EX NOTES公式サイトのライターという立場を私的利用して、その辺りについて詳しく書いていこうと思います。
同人誌即売会で編集者の目に留まった
私は以前より、趣味で同人活動を行っています。しかし、私の個人サークルである「カントダキ。」は有名サークルには程遠いですし、Twitterのフォロワーも1000人に満たないくらいの知名度です。
そんな私に大きな転機が訪れたのは、2015年11月15日に行われたコミティア114でした。
コミティアとは、東京で年に4回のペースで開催されている同人即売会です。プロ志望・商業作家の方もたくさん参加しているイベントでもあります。
コミティアには出張編集部というものがあります。商業誌の各出版社の方々が会場に来ており、その場で原稿の持ち込みをすることができます。
私もその存在は知っていましたし、過去に「漫画家になりたい!」と思ったことはあったものの、それは遥か昔の話。毎回気にはなるものの、原稿の持ち込みに至ったことはありませんでした。スペースの方はといえば、友達が少ないので売り子が不在で、設営は超適当です。
設営完了しました pic.twitter.com/PClltLz1eR
— こぶだし(東方名華祭I-12) (@kobudashiOdashi) November 15, 2015
しかも、東京に前日入りして徹夜でカラオケをしていたため、スペースで居眠りをする始末です。さすがにひどい。
そんなこんなで、普段のコミティアとなんら変わりないイベントが終わり、その日はお酒を飲んでから地元に帰りました。
次の日、例によって職場で社会の歯車の一員として社会に貢献させて頂いているところ、携帯にメールが入りました。
仕事中なので給与の発生する休憩としてトイレでこっそりメールを確認すると……。
「コミックアライブ○○です」
「コミティアで本を買いました」
「毎月ショートでギャグマンガとか描いてみるってどうでしょうか?」
……私は「絶対詐欺だ!!」と思いました。
しかし、送信者の名前を検索するなど、色々と疑いながら調査をしてみたところ、どうやらマジの模様。
「いつスペースに来たんだ?」「というかなんであんなスペースで本を買ったんだ??」と混乱する私。でも商業誌だよな? こんな機会もうないよな……?
かくして、親しい同人仲間(編集長の神乃木さんとか)に相談しまくりつつ、私は連載の話を受けることにしました。
連載のスケジュールについて
では、連載が始まったらどんなスケジュールで描くことになるのか、ここでご紹介しましょう。
コミックアライブは月刊誌ですので、締切は毎月訪れます。だいたいどんなスケジュールで描いているかというと、以下のようになります。
- 毎月10日頃:ネーム(セリフや説明文等)を考えて描きはじめる。
- 毎月25日頃:ネームを編集(担当)さんに提出し、チェックを貰う。編集さんから修正依頼があれば対応。
- 翌月10日頃:完成原稿をデータで提出。編集さんから修正依頼があれば対応。
- 翌月20日頃:写植後の初稿(ゲラ)を確認し、修正があれば編集さんに伝える。
- 翌月27日頃:実際に書店に並ぶ
翌月10日頃には次の月に掲載するネームを描きはじめるので、文字通り月単位で漫画を描いていくことになりますね。
社会人と漫画家の兼業は大変? 儲かる?
私は、普段はいわゆる一般企業に勤めるサラのリーマンというやつです。あまり詳しくは書けませんが、業種はIT系で、客先に常駐してる系エンジニアです。
商業作家でも専業で作家をしている人はあまり多くないらしく、皆さん仕事と作家業を両立しながら描いているようです。
仕事との両立自体はあまり大変だとは思わないのですが、通勤に片道2時間以上かかってしまうのが、連載をする上での最大のネックです。
このため、同人以上に「作業速度」を強く意識しています。ペイントソフトのショートカットとかを設定しまくる感じですね。
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ちなみに、「商業作家になると儲かるの?」とも聞かれますが、担当さんに連載の話を頂いたときに「仕事をすぐに辞めたりすることはできない」と担当編集さんに伝えたら「あ、絶対辞めないほうがいい!」と言われました。そんな感じです。
同人誌はやっぱり趣味。商業誌は妥協が「許されない」
連載を続けていて思ったのは、やはり同人誌は趣味なんだなあということです。
同人誌、それも個人誌の場合は、印刷所の締切が間に合わなかったらコピー本にする、ベタやトーンを使用せずに線画のみにするなどの妥協が許されます。
それは全て自己責任なので、迷惑を被るのは自分だけです。
複数人で作る合同誌はどうでしょう? 合同誌の場合は、主催の方が雑誌の担当編集と同じ役目を果たすことになります。
合同誌の主催の方は、提出フォーマットの間違いや単純なミス、印刷時に影響が出そうな原稿を提出した場合は指摘をします。しかし、話の内容や絵の描き込み具合にまで指摘をすることはほとんど無いかと思います。
雑誌の担当編集さんは、その辺りはいくらでも指摘してきます。それもお仕事のうちなのですから。
ちなみに私は「背景の描き込みが足りない」という指摘をよく受けています。
ネタが浮かばないときは大体ツイートしまくってる
「ネタが浮かばない時はどうしていますか?」もよく聞かれます。
知りません。
最善策を知っている方がいたら教えて欲しいくらいです。
私の場合は、ネタ出しのことをあまり思い詰めて考えないようにしながら他の漫画を読んだり、ニコニコ動画で人類には早すぎる動画を漁ったりしています。
Twitterでよくわからん動画をツイートしまくってるときはだいたいネタが浮かんでいないときです。誰か助けてください。
「描けなくなりたくないから描く」ということ
「連載をやめたくなることはないの?」と、知人に聞かれたことがあります。ありますよ。当然です。
仕事で消耗し、疲れきったまま片道2時間の満員電車で家に帰り、それから朝まで原稿です。寝ずに会社に行くこともあります。
夜中の2時ぐらいに、ネタが浮かばずにレッドブルを飲みながら「何で俺こんなことやってるんだろうなぁ……」と思ったことだって、一度や二度ではありません。
しかし、それでも締切は迫ってきます。ここで原稿を上げられなければ担当さんに迷惑がかかります。
そして何より、「仕事のせいで描けない自分になりたくない」という強い思いがあります。こんなこと言うのはちょっと恥ずかしいですけどね。
私は社会人になりたてのころ、仕事があまりにも激務+薄給過ぎて、大好きだった音楽活動を辞めて、ギターやキーボードなどの音楽機材を売ってしまったことがあります。
仕事のせいで音楽を辞めてしまったーーこれは、今の私にとってはとても苦い思い出になってしまいました。
だからこそ、漫画では同じことを繰り返したくない。どれだけしんどくても、絶対に連載は続けてやる。そんな気持ちで、辛い時でも原稿に向かい合うようにしています。
まあ、会社が無くなってくれればこんなこと考えずに済むのですが。
最後に:同人イベントでも漫画家になるチャンスはあります!
初めにも書いたとおり、私は過去に漫画家になりたいという夢を諦めていました。それでも漫画を描くことは自体はいまだに好きだったので、同人活動をして何度もイベントに参加していました。
それが、同人経由で漫画家となり、昔一度諦めた夢を叶えることができたので、これはこの上ない喜びです。
初めて同人誌を作って本が手元に来たときも嬉しかったですが、本屋さんで売ってるような雑誌に自分の漫画が載っているというのは、言い表しようのない嬉しさです。
アニメ化もした「のんのんびより」が連載している雑誌ですよ!駄菓子屋かわいい結婚したい
一方で、「自分はこれほどまでにスケジュール調整がまずいのか」ということにも気がつきました。毎度毎度ギリギリになってしまい、ご迷惑をかけてしまってます。はよ転職しよ
……長くなりましたが、私のような例は稀だと思いますし、本当に運が良かったとしか言えませんが、イベントに参加し続けていればこういうチャンスもあるんだなということに気付かされました。
特にコミティアは見本誌コーナーというものが設置されていて、より多くの人に本を読んでもらえるように配慮された良いイベントだと私は思います。
漫画や絵を描くことが好きな方、イベントに興味がある方は恐れずにどんどんイベントに参加しましょう!!
あと、私が月刊コミックアライブで連載してる「レッチリ」も読んで、どんどん感想をくださいね!