どうも、器用貧乏こと私です。
前回の記事で「まずは企画書を書く前にアイディアをまとめよう」ということをお話させて頂きましたが、投稿後twitterなどで多数のコメントを拝見させて頂きました。
本記事はどちらかというと「これから同人CDを作ってみたい」という方向けに記事を作成しておりますが、同人音楽以外の今現在第一線で活動している作家さんやサークルの代表さんからもコメントを頂き大変恐縮です。今後気になったコメントや質問を見かけた際、できる限り本記事内でも取り上げられたら良いかなと考えております。
さて閑話休題。前回は「アイディアをアウトプットしてある程度やりたい事を固めました」というところまで来ました。次のステップは、アウトプットしたアイディアを「企画書」という形に落とし込む過程をお話しさせて頂きます。
企画書はなぜ必要なのか?
「アイディアがまとまったのであれば、すぐ行動に移してもいいんじゃないの?」と思われる方が多くいらっしゃると思います。
実際、同人活動では上記のような形でアイディアが浮かんだら即行動し形にしてしまう方は、サークルの大小問わず多くいらっしゃると思います。
もちろんそれで良いものが出来るのであれば、それは良い事なのでしょう。しかし、思い付きで行動したが為に行き当たりばったりになってしまい結果的にグダグダになってしまう恐れももちろん存在します。企画書を作る過程では、その様なリスクを極力軽減させていきます。
じゃあ「企画書を作っておく利点は何か」と言いますと以下のような効果が期待できます。
- 依頼する際に、企画内容に説得力をもたせて相手に説明出来る。
- アイディアから目的達成の為の設計図として一定のフォーマットに落とし込む事が出来る。
- 納期や中身、工程などの具体的な数字や中身を認識しながら作業を進める事が出来る。
- 具体的なプランを説明出来る為、関係者に疑問と不安を払拭する材料となる。
前回の記事でもお話しましたが企画そのもの自体は「目標を達成するための手段」であり、システムにすぎません。
例えばですが、「お腹が空いた」という「問題」が発生し「空腹を満たす」のが「目標」としましょう。「空腹を満たす方法」として「和食を食べに行く」という行為が「企画」に当たります。
ただ、「和食を食べに行く」のは決まりましたが、「どんなものを食べに行くのか」「どんな手段で食べに行くのか」「誰と食べに行くのか」など腹がペコちゃんなのにまだ具体的な中身は何も決まっておりません。
このまま欲望のまま街に繰り出し孤独のグルメを堪能するのも乙なものですが、入った店が「期待していた内容と違っていたり」「想像していたクオリティに及ばなかったり」など、せっかく食べに出かけたのに落胆してしまうかもしれません。
つまり、具体的なプランを事前に決めておくことで、「どんな内容にするのか」「どのように作るのか」「誰を呼ぶのか」「いつまでに必要なのか」といった企画というシステムの骨組みの要素を企画書が担う形となります。
システムを構成するコンセプト・プロセス・イベントなどを定義しておく事が企画書を作成する意義となります。企画書は「企画の設計図」といえるでしょう。
企画書には何を書けば良いのか?
では、実際「中身」は「何を」書けば良いのかという所に入っていきます。
書き方として、ここでは「CTPT」といったフォーマットについてご説明しましょう。
CTPTとは、商品における企画開発などで用いられるマーケティング手法の一つで、コンセプトとターゲットの整合をとり、その上で必要なアクションプラン(行動計画)を形作っていく手法になります。
今回はその「CTPT」を同人企画において使いやすいように置き換えて説明しておりますので、実際の物とは多少差異がございます(注)。詳しい内容として下記の書籍などで触れられていますので、興味がある方は是非一読頂けると幸せになれるかもしれません。
では、「CTPT」を同人企画において使うにはどうするのか。ここでは四つの要素にアイディアを分解していきます。
- Concept : コンセプト(制作物を大まかにどのようなものにするのか)
- Target : ターゲット(どんなジャンル、どんな層に手に取ってもらいたいか)
- Process : プロセス (コンセプトとターゲットを踏まえてどういう中身にするのか)
- Tool : ツール・イベント(どのような手順、方法を用いて制作するのか)
「コンセプト」の部分は前回のアイディアの整理でいくらかまとまっていると思います。他にも「ターゲット」や「ツール・イベント」についてもアイディアが出ていることでしょう。今度は前回まとめたアイディアシートを確認しながら四つの要素に当てはめて考えていきましょう。
先ほどもさらっと申しましたが、アイディアをまとめている際に大まかにイメージがついているものと考え、図のような当てはめ方で具体化しました。
ですが、これはあくまでアイディアの肉付けを簡単に行ったにすぎません。まだざっくりしすぎていて、自分で読むならともかく他人に依頼する際にはちょっと説明しづらく感じます。
今回はCTPTを同人企画用に直していますが、本来は以下のような意味で使用されることが多いです。
- Concept(どんな事業、商品、サービスを提供するのか)
- Target(どんな顧客または見込み客に市場を提供するのか)
- Process(ターゲットに理解してもらい、購入または継続関係に向けてどんなプロセスを描くか)
- Tool(プロセスの中のツールはどんなものを用意するのか)
アイデアシートを企画書に起こす
そこで図のような形から、今度はちゃんとした意味の通るような文章にしてアウトプットを行います。この箇所は個人によって項目が増えたり減ったりしますが、大筋では以下のような中身に区切って書き込んでいきます。
- タイトル(仮題でも構いません)
- コンセプト・ターゲット:このCDを作るに至った経緯やコンセプトについての概要
- プロセス:具体的なCDの中身について
- プロセス・ツール:いつまでに作るのか(締め切りなど大まかなスケジュール)
- ツール:何部作るのか(生産数と予算について)
- ツール:ゲストなどCDに参加してもらった人には何を返すのか(報酬や完成品について)
- ツール:誰がどのように動くのか(責任者や関係者について)
企業や経済活動を行う形のものではありませんから、フォーマットにこだわらずテキストファイルに書き出してそれをDropboxで共有しておくという事でも構いません。しっかりしたものを作るのであればwordやExcelといったドキュメントファイルにし、図を用いて説明していくのも一つの手です。
依頼する相手に対しても自分が読み返す際にしても、読みやすく分かりやすいものが書ければ良いといえるでしょう。
「アイディアが出たらすぐに実践するタイプ」の方でも、無意識にこのような「CTPT」に似た方法で他者に説明を行い依頼や公募といった形でアウトプットを行っているのではないでしょうか。
アイディアを具体的な中身を肉付けしてやりドキュメント化しておくことも「企画書」の大事な役割の一つとなります。
企画書を書き終えて
ここまでざっくり説明していきましたが、いかがでしたでしょうか。アイディア出しから具体的なドキュメントとしての企画書を作成し、具体的な中身を練るといった内容を駆け足気味に説明させていただきました。
本来であればビジネスの分野で用いるイメージの強い企画書というツールですが、同人の分野でも使い方を変えると立派な武器となり得るものです。特に、多くの人間が関わる企画になると、これらのドキュメントがあるのとないのとでは雲泥の差が出てきます。
……
さて、企画書を書き終えました。というところなのですが、実は説明の都合で一つ大事なプロセスをすっ飛ばして企画書を書いてしまいました。
その大事なプロセスとは「スケジュール」となります。この「スケジュール」と呼ばれる部分で締め切りに出来るだけ慌てる事なく制作を進められる事ができるか。
次回はそこをお話しできたらと思います。
次回からは同人制作の泣き所「スケジュール」!
※次回の更新は9月9日(金)ごろを予定しています。