いまさら聞けないCD-Rの構造の基本〜イチから作る同人CDの裏方仕事(6)

編集長が貰った原稿を貰っていないものと認識しており、半年が経過していました。申し訳ありません。しばらくぶりになりますが、餅屋先生の連載を再開したいと思います。

どうもお久しぶりです。餅屋です。

前回はEXとして、イベントのスペースで作品を陳列する方法について出来る限り簡単に説明致しました。

さて今回はいろいろすっ飛ばしてしまいますが、製作・生産についてのプロセスに移らせて頂こうと思います。

まずは製作・生産のプロセスの話に入る前に、オリエンテーションとしてここから数回に分けて「素材」についてのお話をしていこうと思います。まず一回目は親の顔よりよく見たCDという媒体、特に手焼きCDではおなじみの「CD-R」というメディアについて触れてみましょう。

CDというメディアの種類

一口にCDといってもそれぞれ様々な種類が存在していますが、1982年にソニーとフィリップスが最初のCDというメディアを発表した際に定義した規格書「レッドブック」を皮切りに、様々な用途に分けて規格が存在しています。

  • レッドブック…CD-DA、CDEXTRA、CD-TEXTといった音楽用CD(プレスCDなど)
  • イエローブック…コンピュータ・データ用CD(これを配下に様々規格がある)
  • グリーンブック…CD-i(ゲームディスクとか家庭用マルチメディアCD)
  • イエローブックMode2…CD-ROM またはCD-ROMをマルチメディアデータ化したもの
  • ベージュブック…フォトCD
  • オレンジブック…CD-R CD-RW CD-ROといった記録型CD

上記以外にも規格は存在しますがよく耳にするのはこれらの規格に付随するCD達ですね。さてここから分かるようにプレスCDとして作られる「CD-DA」と手焼きCDで良く用いられる「CD-R」は全く違う仕様と規格で作られたものであることが分かります。

CD-RとCDの構造の違い

ではCD-Rというメディアはどういうものなのでしょうか。

CD-Rの成り立ちは1989年に太陽誘電が発売は始め、翌90年に「オレンジブック Pert2」として規格定義されたメディアになり、今日まで記録メディアの筆頭として活躍しているメディアになります。

音楽CDとして書き出した場合はCD-DAとあまり大差はないのですが、通常のCDと違ってCD-Rの特徴はかなり大雑把に図に表してみるとこのように違いがあります。

CD-RとCDの構造

上がCD-Rの構造、下がプレスCDなんかで使われる通常のCDの構造になります。CDというメディアはレーザを当ててその反射の変化をデータとして読み取って成り立っているメディアになります。したがって、レーザを反射する役割を果たす層がもちろん存在するわけなのですが、通常のCDの場合は「アルミ蒸着層」という記録と反射を両方務める層とその下に土台があり、保護層と呼ばれる部分で記録している部分を守っているという構造になります。

対して、CD-RはCDと違い(レーベル層を除いた)4層で構成されています。下から土台となる基盤、記録層、反射層、保護層とCDのアルミ蒸着層の機能をわざわざ二つに分けて構成されています。

従来のCDはアルミ蒸着層にあるレーザの反射を変化させる凹みが存在するのですが、それをCD-Rでは有機色素を強力なレーザを当てることによって変化させ、その凹みの代わりを行っている形になります。光で色素が変化しちゃうので、太陽光などの光に少し弱いのも特徴ですね。

CDの劣化に深く関係する「色素」とは

一度色素が変化してしまうと戻す方法がない為、データ自体が非可逆的になります。一度書き込んでしまうと絶対消せないというのは、これが理由になるわけですね。ちなみに、焼いたCD-Rの盤面を見てみると焼く前と後とでは色が変化している事がよくわかります。手焼きをした際に確認してみると良いでしょう。

またこの記録層は基盤に貼り付けただけの構造な為、表面が傷つけば記録層も剥がれ落ちちゃいます。なので、手書きで文字を記入する際はボールペンなどの先のとがった筆記具は使わないように気を付けましょう。

補足的な説明ですが用いられる色素の種類は主に三種類あり、それぞれメーカによって異なっています。

  • シアニン色素:太陽誘電が実用化した記録層材質。一番多く普及しているが他の色素に比べあんまり安定しない。見た目がっぽい。
  • フタロシアニン色素:三井化学が実用化した材質。シアニン色素に比べ安定し、薄く延ばしても使用できることから低価格化に一役買った色素。アジア製のディスクに用いられることが多い。見た目が黄色っぽくなる。
  • アゾ色素:三菱化学メディアが実用化した材質。一番安定した材質だが上の二つより高価である。耐久性に優れている。っぽい。マスター用ディスクとかに用いられていたりする。

後にCDのライティングで説明する「高倍速での書き込み」について解説すると思いますが、この色素の違いが書き込み時のエラーに深くかかわってくる内容になります。テストに出るので覚えておきましょう。

CD-Rにはどんな種類があるの?

CD-Rの種類は大きく分けて三つ存在します。ただし、種類は違うといってもオレンジブックに記されている「記録型CD」という規格と仕様に逸脱しない使用方法となります。あくまで記録媒体としての使用がメインといった形になります。

  • データ用:一般的な12cmのCD-Rで600MB~700MBのデータを記録できるCD-Rとなります。700MBでだいたい80分ほど記録する事が出来る内容となっています。
  • 音楽用:データ用との違いとして「Disc Application Code」という判別信号が記録されていてオーディオ用のレコーダで録音する際に判別される他、私的録音補償金が価格に上乗せされています。それ以外はデータ用となんら変わりません。
  • High Capacity Recordable Disc:700MB(80分)を超えるCD-Rの規格にあたり、最大でおよそ100分以上の記録が可能なのですが、読み取り・書き込み機器やリッピング・ライティングソフトが限られている為あまり普及していない規格になります。

ここまでの話

今回はCD-Rについてのお話になりました。これらの話はCDを焼く「ライティング」する作業において結構大事な要素となります。またプレスCDを作る際、マスターディスクをこちらで作る時もこの知識は比較的役に立つのではないでしょうか。

さて次回は、オリエンテーション第二弾「CDのケース」について解説していこうと思います。それでは、また次回お会いしましょう。