また二週間ぶりとなります。
M3直前となりますが、無事生産を終えて一息とか言っている場合じゃない程度に仕事やら日常やらに追われています。そろそろまとまった休みが欲しいところです。
ようやく長ったらしいスケジュールについての解説が終わったのでいよいよ今度はCD作りについて解説していこうと考えています。
その前に前回予告した通り今回は制作から離れて実際に頒布する即売会での「陳列」について解説していきたいと思います。
といっても、「〇〇を用意しろ」とか「集客するには~」とかそういう話はせず、今回の話はあくまで「物の置き方と見せ方」における「陳列」と呼ばれるものに着目致します。
長机を半分に割った「高さ約70センチ×幅約90センチ×奥行約45センチ」の空間でどのように頒布物を並べるのか、それについて考えていきたいと思います。今回はこれ単発のつもりなので、オリエンテーションみたいな感じで読んでいただければと思います。
即売会でよく見る一般的な陳列方法
即売会において「どうやって自分の作品」を見せてアピールするかは難しい課題になってきます。
小売業界における「陳列」は「買い物客の足を止め」「商品に興味を持たせ」「最終的な購買意思を決定づける」という意義が存在しその見せ方の良し悪しによって、その日手に取ってもらえる機会というのは大幅に増減するといっても過言ではありません。即ち、売り上げを左右する要素の一つになります。
一人でも多くの人に手に取ってもらいたいという意義では小売りと即売会での頒布はある意味利害が一致している部分が多いともいえるのではないでしょうか。
そんな即売会では薄い本であろうがCDであろうが即売会でよく見る陳列方法として一部例外を除き、大きく二種類の陳列方法に分類されます。
平積み
表紙またはジャケットを上に向けて積み上げる形で行う陳列方法で、一番ポピュラーな形とえます。書店やCDショップでは主にベストセラーや新刊など、本屋が売りたい、よく売れる商品が中心にこの置き方をしています。利点として、準備が比較的容易にできることと、とにかく物をたくさん置ける省スペース性にある点ですね。
面置き(面陳列)
平積みとは違い、あえて人の目線に行くように表紙とジャケットを見せる陳列方法ですね。
書店では店員のおすすめとしてピックアップ商品を並べるときに用いられる手法になります。小さなイーゼルや小規模な什器を用いて人の視界に作品を見せる形であるため、利点は平積みと違い人の視界に入りやすく手に取られる機会が格段に上がる陳列方法だといえます。
面積みか平積みか、「見やすさ」基準で考える
この二種類の方法はどちらも利点と欠点がはっきりとしているので、どちらが良いかはそのサークルの頒布物によってどちらかを選ぶ、あるいはどちらも使うという感じに考えながら選択すると良いでしょう。
この基本の形から、人に興味を持ってもらいスペースに近づいてもらえるか。そこから作品を手に取ってもらうにはどういう見せ方をすれば良いのか、という点を考えていきましょう。
そこで役立つ考え方として小売業における棚割り計画の三原則「見やすいこと」「取りやすいこと」「選びやすいこと」とあります。今回はその中でも「見やすいこと」について着目したいと思います。
「見やすいこと」とは?
陳列において大事なステップの第一要素は「見やすいこと」で、広告や小売りでは「商品は多く見せれば見せるほど売れる」とよく言われる事になります。
これは心理学における「スリーセット理論」と呼ばれ「人間は一回目で対象に興味を持ち、二回目で対象について評価、三回目でその評価を再確認する」というものがあり、つまるところ三回までに見た段階で人間の持つ評価というのはほぼ確定してしまう、ということに基づいた理屈になります。
作品の見せ方が「良いもの」であれば作品に対して「好印象」や「興味」を持ってもらえるきっかけとなるということに繋がります。またその逆も然りであり「見やすいこと」はとても大事な要素となります。では、どのように見せると良いのでしょうか。ここで人間の視野について着目したいと思います。
人間は通常前を見るとき、真っすぐ水平に見ているわけではなく水平な視線より10度から30度の下方の範囲を見ています。これは無意識に自然に見ている視線の範囲で「自然視野」と呼ばれる範囲で、この視野角内に入ることが人間にとって「見やすい位置」にあるといえます。
このような客にとって見やすい「自然視野の範囲」を小売業では「ゴールデンゾーン」と呼ばれ、概ね「腰の位置から胸まで」の高さがそれに相当します。ここに「売りたい作品」「よく売れる作品」を置くことにより高い頒布率が期待できます。
平積みと面置きにおけるゴールデンゾーンの違い
では、先に説明した「平積み」と「面置き」で「ゴールデンゾーン」はどのように見えるか実際に見てみましょう。ジャケットを中心に0度の線を置き、見やすい30度の範囲をオレンジ色で塗ってみました。
平積みの場合は見やすい位置まで行こうとすると、スペースの近くまで行かないとゴールデンゾーンに入らないことが分かります。対して、面置きの場合は作品を仮に75度の角度で置いた場合、離れていてもゴールデンゾーンに入ることが分かります。
このように遠くから興味を持ってもらうには、「面置き」を行うことで、遠くからでも興味を引くことが可能になり、手に取ってもらえる機会が増えることでしょう。
半面、スペースの近くまで来た際は作品を間近で見てもらえる為、数を多く置ける「平積み」が今度は友好的な手段となります。
どちらのスタンスをとるかはスペースの設営の際に一考して頂ければよいでしょう。
ゴールデンゾーンはあくまで視線が集まりやすい場所を指していますが、通路の幅や什器の大きさ、お客の身長などにより範囲も場所も変化します。その為あくまで目安としてください。
終わりに
今回はEXということで「陳列」について、物の見せ方についてお話いたしました。もちろん陳列以外にもやることは山ほどあります。あくまで陳列はその山ほどやることの中の一つとして考えて頂ければと思います。くれぐれも良いレイアウトで見せたからと言って、100%たくさん売れるなんてことはあり得ませんので、その点留意頂ければと思います。
また「陳列」を手助けしてくれる折り畳みの什器も多く売られています。(例:出版評論社「KAMINOTANA」など)こちらをイベントなどで用意しておくとレイアウトの手助けになるのではないでしょうか。
それでは、今回はここまでとさせて頂きます。
次回は本筋に戻る予定ですが、製作についてのお話になると思います。