当サイトでは2016年、2017年とグラフィックボードの選び方・買い方を紹介しているが、今年もグラフィックボードの情報がかなり温まってきた。
今年の大きな動きのうち、グラッフィクスやゲーミングに特に関係がありそうなトピックは、なんと言ってもGeForce RTXシリーズの発表。そして、Intelの第9世代Coreプロセッサ、AMDのZen+アーキテクチャを採用したRyzen 2xxxシリーズなどの8コア以上のCPUが一般市場へと投入されたこと、Vive Proなどの高性能なVR HMDが登場したことなどだろう。
前回の記事一年が経った今、各社からNVIDIA Turingを始めとした新基軸を搭載したグラフィックスボード(GPU)が出揃っている。そこで今回は、現在どのグラフィックスボード(GPU)を選ぶべきなのかを紹介していきたい。
デスクトップPC向けのおすすめグラフィックスボード製品
1.絶対的な性能と将来性で選ぶならRTX 2080Ti (18万円~20万前後)
まずコストを度外視し、性能が一番という人には、このGPUをおすすめしたい。
Turingコアを採用したRTXシリーズのウリは、「RTコア」と呼ばれるコアがGPUに統合されたことだ。
一見ゲーマーには関係のないように感じられるかもしれないが、この「RTコア」は、更にリアルな映像表現技術「レイトレーシング」を高速演算することができる画期的な演算ユニットなのだ。
レイトレーシングとは、3D空間の中の物体に当たる複雑な光を演算し、より厳密に陰影や光源を表現する技術で、光源追跡法とも呼ばれている。特に、ガラスや水など、反射を伴う表現において効果を発揮し、ハリウッドを始めとする映画・VFX業界ではおなじみの技術だ。
しかしこの演算は非常に複雑であり、従来のGPUで行おうとすると、フルHD(1920×1080)でも1fpsすら出せないことも多く、リアルタイムでのレイトレーシング処理は絶望的と称されてきた。
だがRTXシリーズでは、この処理を新基軸のRT Coreに任せることによって、ついにゲームに耐えうるフレームレートを実現することが可能になったのだ。
参考リンク(nVIDIA公式サイト):NVIDIA、10 年間にわたる開発の末 GeForce RTX によってリアルタイム レイ トレーシングをゲーマーに提供
肝心のゲーミング性能もGTX 1080Tiに比べておおよそ50%以上アップし、さらに4KやVRでのパフォーマンスはそれ以上に上がっている。シングルGPUでは最速で、SLIなどのマルチGPUが使えないゲームにはより大きな恩恵を受けられるだろう。
もちろんネックとなるのはその価格で、流通もまだ万全ではない。だが前述のように、機能面・性能面でもトップを行くGPUであり、今後追従するゲームタイトルも出ることが想定されることから、手に入れる価値のあるGPUだと思われる。
2. 筆者おすすめ。お買い得感が更に増した GTX 1080Ti(8~9万前後)
RTX2080の登場により、前世代ハイエンドに当たる1080Tiは値崩れが大きい。上記2080Tiを一枚買うお金で二枚買えるかもしれない。性能はRTX 2080をと同格ながらも、値段は安くコストパフォーマンスに優れている。
弱点として、やや消費電力が大きいことが挙げられるが、許容ができるならば2080Tiを一枚買うより1080Tiを二枚買うほうがお得かもしれない。レイトレーシングなどの機能を重視しないのであれば1080Tiを購入し、値段が下がったころに2080や2080Tiといったカードに乗り換えるのが得策だと筆者は考える。
3.ハイエンドもお買い得に、GTX1070(4万-5万)
こちらもGTX1080Ti同様に大きな値崩れが起きており、一時期のGTX1060(6GB)と大きく値段が変わらないレベルまで下がっている商品も見かけるようになった。
性能はもちろんハイエンドで、VRを楽しんだり昨今のバトルロワイヤル系ゲームを高フレームレートで楽しむには十分以上の性能がある。
こちらはショート基盤モデルも用意されており、筐体がとても小さいPCでもリプレイスが見込め、かつ消費電力も控えめなので非常に取り回しのし易いGPUだと言える。
4.あえてAMDから選ぶなら…Vega 56(5万前後)
一時期のマイニングブームによって脚光を浴びたAMD製GPUだが、そのブームが下火になった現在、ゲーミング性能でやや水を開けられてしまっているのが現状のAMDカードである。
AMDカードの特徴としては、FreeSyncと呼ばれる、フレームレートが低くなっても画面のカクつきを抑えて描画を安定させ、入力の遅延を防ぐ機能を持っていることが挙げられる。
その中でも一番コストパフォーマンスに優れているのがVega 56である。性能は1070より若干高速でやや熱が多いことがネックなのだが、高速なメモリのおかげでフルHD以上でのゲームのパフォーマンスでGTX1070を上回るポテンシャルを秘めている。
4K液晶にはFreesyncが搭載されているものも多く、この点でもGTX 1070に優位性がある。もしFreesyncを活かしたゲーミング環境を整えることを検討中なら大いにアリな選択肢だろう。
デスクトップPC並の環境を持ち出せるおすすめ最新ゲーミングノート
今年に入ってからスマホのベゼルレス化の波がノートパソコンにも反映されてきており、以前あまり選択肢の無かったMacbookPro 15インチサイズのゲーミングノートが数多くリリースされた。ここでは、そんな小型・パワフルなゲーミングノートを紹介したいと思う。
1.Razer Blade 15
おなじみRazer Bladeの最新版で、以前は14インチ液晶だったものをベゼルレス化によって15インチ液晶に大型化、それに伴って一回り大きくなってしまったものの、144HzのフルHD液晶を搭載し、CPUには6コア12スレッドのCore i7-8750H、GPUにはGTX 1070をやや省エネ化したGTX 1070 Max-Qを採用。これによってGTX1060を搭載したデスクトップ級の性能を実現することが可能になった。
本体重量が2kg弱と重く、ややACアダプタが大きいのがネックだが、ベイパーチャンバーという普通のヒートシンクに比べてより排熱がスムーズになる冷却機構を搭載しており、高負荷時でも熱が気にならないようになっている。
2.MSI GS65 Stelth/P65 Creation
MSIのGS63をベースに小型化・軽量化を施したもので、Bladeと同様CPUには8750H、GPUにはGTX1070 Max-Qもしくは1060を搭載している。
144Hz液晶に応答速度7msという高速な液晶ながらもsRGBカバー率92%という広い色域を備え、また本体重量が1.8kgとややBladeより軽いのが特徴で、カラバリとして白/シルバーのP65 Creationというモデルも用意された。
ゲーミングノートは見た目が厳つく、あまり人前でさらけ出すのは抵抗感がある…という方でも白/シルバーモデルならば傍から見ても普通のノートパソコンに見えるため、カフェや会社でも人の視線を気にすることなくゲームに打ち込めるのがメリットと言えるかもしれない。
3.Alienware m15
従来のAlienwareをベースに薄型化を施したもので、構成としては上記二機種と大きく変わらないものの、より強力な冷却を実現するためにキーボード面で吸気を行うことが特徴だ。
改良された冷却機構により、CPUを一時的に高クロック化させることによって性能の向上を果たしている。
また上記二機種と違い、BTOオプションに4K液晶が選べることも特徴で、より高解像度な液晶がほしいユーザーにはピッタリな選択肢だろう。
AMDで組み換えを考えてるなら今は待とう。次世代グラボの噂も。
AMDでは、NVIDIAのTuringに対抗した次世代GPU「Navi」「Vega 20」が発売を控えており、早ければ年明けには「Navi」を採用した新GPUが出回ると予想されている。このNaviは性能こそGTX1080と同等と推定されているものの、予想価格が299usdとなっており、コストパフォーマンスに優れるのが特徴だ。
また、一般向けに出回るかは不透明だが、現在のVegaアーキテクチャを改良した「Vega 20」も目下準備中とのことだ。性能は2080Tiに及ばないかもしれないが、製造プロセスが微細化され、かつ高速で大容量なビデオメモリを積むことによってコンテンツの制作や4K以上の高負荷時に強いカードに仕上がることだろう。
終わりに
NVIDIAのTuringカードが単純な性能強化版ではなく、新機能のレイトレーシング(光の反射や陰影をリアルにする機能)やDLSS(AIによるアンチエイリアス効果)を搭載し、付加機能をウリにし始める一年となった。以前より機械学習をウリにしていた同社ではあったが、コンシューマー向けに機能を付与することによって、今後は機械学習を用いたゲームの最適化やレイトレーシングを用いたよりリアルな描写を行うゲームが増えることになるだろう。
また、AMD、Intelともに8コアのCPUを一般市場へと投入したため、今まではCPUによってボトルネックになっていたタイトルもより高速に動作することが期待できる。今後はゲーム側も多コア化するコンシューマー向けCPUへの最適化が進み、よりマルチスレッドを活かせるタイトルが増えると予想される。もし未だに4コアのCPUを積んだPCを使っており、現在買い替えを検討中であれば、ぜひこの機会に乗換を考えてみてほしい。
おまけ:グラフィックスボード寸評・早見表
この下にある寸評は、筆者がこの記事を書く際に予めまとめておいたまとめだ。編集部内で好評だったのでこちらも公開しておきたい。