グラフィックボード(グラボ、GPU)には様々な種類のものがある。安いものから高いものまでたくさんあるが、「どれを買えばいいのかわからない」と思う人も多いのではなかろうか。
さらには、最近のノートパソコンや一部の液晶一体型ディスプレイでは、GPUの欄に「Intel Iris Graphics」や「Intel HD Graphics」という型番のGPUが搭載されているのを目にすることもあるはずだ。これらはGPUがCPUと一体になっている製品であるが、これでも十分そうな気もする。
……グラボの世界は、とにかく選択肢が多い。
今回は、大量に存在するグラフィックボードのなかから、2016年6月時点でオススメできる製品を、デスクトップ向け・ノートPC向けそれぞれで紹介していきたい。
そのグラボ、本当に必要?
PCを選ぶときの基準は人それぞれかもしれない。
冒頭で紹介した「Intel Iris Graphics」や「Intel HD Graphics」は、CPUと一体となったGPUのことで、グラフィックボードを別で買わなくともGPU演算を行うことができる。ネットサーフィンをしたりOfficeを使ったりという場面では、これで十分といえる。しかし、少し重たいゲームや動画編集、画像編集の時などを行うときには力不足な事が大半だ。
そこで、より強力なグラフィックス処理を行うのがnVIDIA/AMDのGPUである。
外付けのグラボは演算処理・描画処理に特化しており、CPUに統合されたGPUとは一線を画する性能を誇る。一方で、排熱が大きくなってしまったり、消費電力が多くなるため、軽い作業をメインにするのであれば外付けグラボは必要ないと考えられる。
だが、PCでゲームをしたり、動画編集をしたり、3Dモデリングをしたり……そういったいわゆる「重い」作業をしたい場合は、外付けのグラボを搭載することで内蔵グラフィックスとは一線を画する快適度になるのは確実だ。
まずは以下の2点を覚えておこう。
- ネットサーフィンやメール程度では、CPU統合型のグラフィックスで十分であり、グラフィックボードを買う必要はない。
- PCゲームや画像編集、動画編集を行う際には、グラフィックボードを使用すると大幅に快適になる。
特に顕著なのはPCでゲームするときであり、近年発売されたゲームはPS4/Xbox Oneなどの高性能なゲーム機と同等以上のスペックが要求されることが増えてきた。
この記事では、筆者の独断と偏見で、導入することで快適なゲームプレイが出来るようなグラボを取り上げていきたい。
コスパで選ぶグラボ3選
現在市販されているグラボの中で、最もコスパが良いグラボはズバリ、GeForce GTX1070である。
現在nVIDIAのハイエンドグラフィックボードといえばGeForce GTX1080なのだが、こちらは価格が10万円近くと高めであり、コストに対するパフォーマンスがそれほど高くはない。若干パフォーマンスが下がるものの、GTX1070のほうが総合的な満足度は高いといえよう。
価格は現在は6.5万円程。それなりにハイエンドな価格ではあるものの、旧ハイエンド機であるGeForce GTX980Tiより省電力で、対抗のRadeon Fury Xとは1万円ほど安価で、かつ、水冷用のラジエーターを設置するスペースの手間が無いため導入が行いやすい。
また各社からオリジナルファンモデルが登場し、値段も6万円を切る製品も存在するため、入手性が改善されればこちらを選ぶのが得策だと思われる。
しかし、発売からすでに一ヶ月経過しているが、相変わらず流通量がとても低い。また前世代のハイエンド機並の性能を持つとしても、6万円という価格は少し手が出しにくいだろう。
そこで今回は、6万円台より下の価格帯で最も費用対効果を実感できる物を3つ取り上げることにした。
GeForce GTX970 参考価格:39000円
GTX1070の1世代前の製品だが、性能としてはPS4/Xbox Oneを軽く超え、ほぼすべてのPC用ゲームで最高のグラフィックスで楽しむ事ができる。
弱点としては高解像度のテクスチャをたくさん扱うゲームだとメモリ容量が不足し、カクついてしまうことである。
フルHD(1920*1080)よりも大きな解像度で快適にかつリッチなグラフィックス機能を求める場合は上位モデルであるGTX980Tiや最新世代であるGTX1070の導入をおすすめしたい。
GeForce GTX960 参考価格:22000円
いきなり4万円近くはちょっと…という方におすすめのグラボである。
性能としてはGTX970よりも一回りダウンするが、MMOの有名タイトルであれば最高品質のグラフィックスで、最近のFPSなどのややグラフィックスを要求するタイトルではグラフィックスの品質を一段階下げることにより、快適なゲームプレイが楽しめる。
メモリ容量が2GBのモデルと4GBのモデルがあるが、たった数千円しか違わず、2GBでは容量が足りない場合もあるので4GBの方がオススメである。
Radeon Fury Nano 参考価格 67000円
こちらは上2つのカード比べてカードサイズが159mmと一般的な大きさのマザーボードの幅より小さく収まっており、設置スペースに余裕が無い場合でも導入を行いやすいのが最大のメリットである。
性能としては、フルHD程度の解像度ではGTX970に肉薄されてしまう場面もあるが、高解像度(2560*1440)以上になるとGTX1070に迫る性能を持つ。
最近流行りの湾曲型ディスプレイやトリプルディスプレイ以上でゲームをすることを考えていて、なおかつ設置スペースに不安がある場合はこちらの製品を選ぶことも検討して欲しい。
ノートパソコンでもゲームは楽しめる。オススメのゲーミングノートパソコン
一昔前のノートパソコン向けグラフィックスボードはあまり性能が良くないか、もしくはとても排熱が大きく、負荷を掛けてしまうと頻繁に熱暴走を起こしてしまっていた。
しかし、最近ノートパソコン向けのグラフィックスボードの低発熱化・冷却機能の発達によってノートパソコンでも快適にゲームが出来るようになってきた。
排熱・価格・性能のバランスが取れていて、どこでも快適なゲームプレイが出来る機種はGeforce GTX970Mを搭載したPCがオススメだ。
GTX970Mはデスクトップ向けのGTX960に近い性能を持ち、またメモリ容量も4GBで、値段がこなれている。
搭載製品は全体的に大きく重いため、毎日持ち出すのは難儀ではあるものの、車で旅行にでかけたり、家の中で移動をしたりするなどのちょっとした持ち運びが楽に出来る。
また、毎日持ち歩いてどこでもゲームがしたい!という方には下記の製品がオススメである。
GS40 https://www.ark-pc.co.jp/i/72000466/
Razer Blade 2016 http://www.razerzone.com/jp-jp/store/razer-blade
この2つは14インチと一回り小さい筐体に2kgという軽さ、厚みも最大で22mmという薄さながらもGTX970Mを搭載している。
欠点としては、筐体の小ささゆえ冷却機構が小さく、高負荷をかけ続けると熱によって本来の性能が生かし切れないことと、消費電力が大きいため、あまり電池が持たないというデメリットはある。
常に充電が出来る環境が整っていて、熱に対してもある程目を瞑れるのであれば是非検討してみて欲しい。
もし値段に糸目をつけず、かつどんなに重くて大きくても持ち出して快適にゲームをしたいというのであれば、デスクトップ向けのGTX980を搭載したこの製品がオススメである。
Lev-17FG098-i7K-VE https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=578852&dmai=a526755d990ec5
この機種はデスクトップ向けのCPUとデスクトップ向けのGTX980を搭載しており、「ディスプレイとキーボードとバッテリーがついたデスクトップ」というのが正しい表現である。
値段も超弩級であるが、この機種であればどこでも最高のゲーム体験を得ることができると思われる。
今買うのは損? 2016年7月以降発表される期待のGPU
「今年中にPCを買い換えたいが、今すぐ必要ではない」という場合は、少し待ってみるのもありかもしれない。
nVIDIA社からはGTX1080/1070というハイエンドなグラボが発売されているが、AMD社でも同様に新世代のグラボを用意している。
近日おそらく発売されるそのグラボはRadeon RX480という物であり、こちらはGTX1070より更に安い249$(この記事を執筆している時のレートだと2万6千円程)で発売が予想され、国内でも3万円程度で購入することができるかもしれない。
…はずだったのだが、国内価格はどうやら35000~38000円という価格で出てくることになってしまった。
(参照元 http://www.gdm.or.jp/voices/2016/0625/167934)
それでもRX480の性能は高い性能を誇る。下記のベンチマークを見て欲しい。
(参照元:http://videocardz.com/61512/first-radeon-rx-480-gaming-benchmarks-hit-the-web)
ここでの比較対象になっているGTX970はZOTACのAMP!Omegaという製品で、かなりのオーバークロックを施された物である。対してRX480はオーバークロックを施していない通常のものであり、RX480の性能の高さが際立つ。
また、VRに正式に対応することから安価にVRでゲームをしたいという人にうってつけの物になるのは間違いないだろう。初期出荷分はいわゆる「ご祝儀価格」が設定されており、市場に潤沢に商品が出まわる頃には値段もこなれてくると予想される。
定価より大幅に高いが、それでも欲しいという方は深夜販売を行う店舗があるので是非足を運んでみて欲しい。もし近隣に店舗がない・行くのが面倒という場合は通販でも受付を行う予定だ。こちらもチェックしてみて欲しい。
(参考元1:http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/1007151.html)
参考元2
「Radeon新型VGA」
通販にて6月29日(水)深夜から販売しますよ!
※実店舗での深夜販売はありません。— オリオスペック (@OLIOSPEC) June 27, 2016
nVIDIA社も同様の価格帯にGTX1060というグラボを用意している。
本日、香港のあるサプライヤーにGTX1060の実機が到着したとのニュースが入った。
(参照元:http://videocardz.com/61507/nvidia-geforce-gtx-1060-spotted-in-hong-kong)
詳細なスペックや価格は未定ながらも、7月上旬頃から一般市場向けに販売が行われるという噂である。
どちらにせよ火急の用事でなければ
「待ち」が最も良い判断だと筆者は考えている。
まとめ
長くなってしまったので、再度要点をまとめると、以下のとおりだ。
- ネットサーフィンやOfficeを使う程度ならグラボはいらない
- ゲームを楽しみたいならGeForce GTX960以上、ノートパソコンであればGTX970M以上が良い
- AMD、nVIDIAともに新しいコアを発表しているので火急でなければ「待ち」というのも手である
筆者は現在、GeForce GTX Titan Xという購入当初16万したGPUが7万円程度のGTX1070に性能を越されて涙目になっている。
CPUの進化に比べてGPUの進化は早く、前世代の最上位が2~3年でミドルレンジクラスまで追いやられてしまうほどである。
あくまでも個人的な買い替えサイクルではあるが、大体この2~3年おきにその当時に最も性能が高いグラボを買うのが費用対効果としては優れていると考えている。
新規に購入する場合はGTX1070/1080を搭載したパソコンを購入するのがお得かもしれない。