今は買い時?2017年後半のグラフィックボード(グラボ)の選び方と買い方

パソコンの新調やカスタマイズを行う際に、まず重視したいのがグラフィックボードの性能だ。近年はVR対応やGPU演算のソフトウェアも増えており、その需要はますます増えているといえるだろう。

今回は、前回の記事(今買うと損? 2016年下半期版 グラフィックボードの選び方と買い方)から半年が経ったこともあり、各社から新たなグラボも出揃ったところで、2017年6月現在おすすめできるグラボを紹介していきたいと思う。

なお、VRについて検討している方は、以下の記事も参照いただきたい。
PCでVRゲームをプレイするために必要な機器と選び方のキホン

デスクトップ向けグラボでコストパフォーマンスに優れる製品

nVIDIA Geforce GTX 1080(7.5万円前後)

現在手に入るグラボにはGTX1080より上位モデルのTitan Xがラインナップされているが、こちらは非常に大きな電力を消費し、かつ排熱に難があるためあまりおすすめできない。一方でGTX1080は、各社から高耐久・高性能で十分な冷却機構を持っている機種が発売されている。

前回の記事を執筆した当時では、価格が10万円を超えるためあまり魅力的ではなかったものの、現在は値段もだいぶ落ち付き流通量も豊富で、各社から7万-8万円前後のモデルが多く揃う。オーバークロックやベンチマークを回す必要がなければこのクラスのものを選択するのが良いだろう。

nVIDIA Geforce GTX 1060 6GB(3.5万円前後)

前回取り上げたGTX 960の後継に当たるモデルで、性能としてはGTX 980に匹敵する。VRAMが6GBと3GBの二種類がラインナップされている。

ただし、3GBモデルはメモリが半分になっただけ……というモデルではなく、実はCUDAコア(GPUの処理を行う部分)が一部無効化されており、性能が下がってしまう。

したがって、たしかに3GBモデルに比べると僅かに高くなってしまうものの、それ以上に性能が高くなるため、VRを視野に入れている・フルHD以上でのゲームを行おうと考えている場合は6GBのほうがおすすめだ。

あまりハイエンドなモデルだとGTX 1070が見えてきてしまうため、購入をするなら3万円前後のものが良いだろう。

AMD Radeon RX 580(3.5万円前後)

GTX 1060の対抗馬としてAMDが送り出したミドルモデル、RX480の後継モデルとなるのが、2017年4月に登場したRX580である。性能・価格的にもGTX1060とかなり拮抗しているが、より多くのVRAMを持ち(GTX1060は6GBが基本、RX580は8GBが基本)、動画再生支援のFuluid Motionを備えるのがGTX1060との差異である。

多くのVRAMを持っていることから高解像度なテクスチャ・modを詰め込んだゲームを行うときはこちらのほうが1060より優れる場合もある。また動画再生支援機能のFuluid Motionは30fpsや29.97fpsなどといったフレームレートを持つ動画を擬似的に60fps化し、なめらかな動画再生を実現することが可能である。

6月現在、マイニング需要(ビットコインを稼ぐためのGPU演算用途)により通販では品薄が目立つため、在庫に関しては各ページを参照して確認いただきたい。

AMD Radeon RX 570(2万円前後)

上記のRX 580の弟分に当たるモデルで、性能としてはGTX 970と概ね拮抗する性能(正確にはGTX 970より少し下)を持つ。

VRAMが4GBとこれまでの三機種の中では最も少ないが、最近のタイトルでもフルHDであれば十分動かせる性能を持ち、RX 580同様Fuluid Motionを備える。

「あまりコストをかけられないが、最近のPCゲームをやってみたい」「少し前のミドルレンジモデルから乗り換えを行いたい」という場合ならこのGPUがベストだと思われる。

もはやデスクトップ並、最新ゲーミングノート

この半年でノートパソコン向けのGPUも更新され、ともに最新世代のGPUにアップグレードされた。

どちらのメーカーもデスクトップパソコンの8割から9割という前世代からでは考えられない程の性能を持ち、下手なデスクトップパソコンより性能が優れてる場合もある。

ここでは、優れた性能と排熱性を兼ね備えたゲーミングノートを紹介したいと思う。

MSI GS43VR 6RE Phantom(20万円~)

非常に小型のボディだが、デスクトップ向けのGTX1060と同じ性能のグラフィックス機能を持ち、デスクトップ向けよりやや発熱の抑えられたCPUを備える。

結果、トータルの性能としてはGTX980を搭載したデスクトップパソコンに相当し、1.6kgの軽量なボディと相まってどこでもゲーミングができる。

また、高性能コンポーネントを冷やすための冷却機構も備わり、底面にはメッシュの付いた大きな開口部が存在する。これにより、効率的に空気を取り込めるが、ホコリなどが詰まりやすいため定期的な清掃を心がけたい。

NEXTGEAR-NOTE i5530SA1(16.5万~)

製品販売サイト:【G-Tune】

あまり持ち運びせず、デスクトップの代わりとして購入を考えるならば15.6インチの液晶を備えるこちらがおすすめである。性能的にはGS43VRとほぼ変わらないものの、筐体の大きさを活かし、排熱を上手く逃すことが可能で、高負荷時でもGS43VRに比べてファンノイズが小さく、熱による性能低下も少ない傾向がある。

2-3.Dell Inspiron 15 ゲーミング プレミアム(12万~)

製品販売サイト:【Dell】

DellのスタンダードノートパソコンであるInspironの中で、もっとも高性能なモデルになる。GPUはノートパソコン向けのGeforce GTX 1050Tiを搭載している。VRで遊ぶことはかなり難しいものの、デスクトップ向けのGTX 1050に相当するスペックを持つため、ややグラフィックス品質を落とせばほとんどのゲームが動作すると思われる。

値段もかなりお手頃な上、定期的に発行されるクーポンを併用するともう少しお手頃な金額で手に入るかもしれない。また、別料金となるがDellによるアフターサポートは上記二社よりも手厚いため、長く使用する・初めてPCを購入するという人にはおすすめの機種だ。

普通のノートパソコンでも熱を気にせずに高性能なGPUを使える……かもしれない?

参考リンク:Razer Zone 公式サイト

RazerとPowercolorからリリースされている外付けGPUボックス「Razer Core」「Powercolor DevilBox」を使うと、Thunderbolt 3端子を備えていて、Windows 10(64bit)であればノートパソコンでもデスクトップ向けのグラボが使用できる。

理論上はMacbookのような薄型ノートパソコンでもThunderbolt 3端子があれば使用が可能ではある……が、このThunderbolt 3は制定されて間もなく、未だに動作が不安定だったり、接続しても認識されない場合が多い。そのため、値段も相まって「今はまだ」おすすめできない商品だ。

しかし、規格が整備され、各社から外付けGPUボックスがリリースされるようになった場合、デスクトップパソコンが要らなくなってしまうかもしれない。

一足先にそういった世界を体験したい方にはうってつけのモノである。

本当に買い時?次世代グラボの噂

前回も同じ〆をしたような気がするが、現在nVIDIA/AMDともにハイエンドGPUを投入する予定があり、今年の夏にはリリースされるであろうと言われている。

特にAMDはVegaと呼ばれるグラボを今年夏までに投入し、Titan Xや1080と対等かそれ以上の性能、そして価格的にも訴求感のあるグラボになっている。

対するnVIDIAも現在のPascalコアを最適化したPascal-Refreshを準備中との噂で、こちらはコアクロックの引き上げや1080とTitan Xの間を埋める1080Tiの追加が予定されている。

終わりに

GPUの世界は進化が早く、またVRやMicrosoft HololensといったMR(Mixed Reality)などの技術発展も早い、そのため普段しようするソフトやゲームなどの動作確認などがとれているモデルを買うのがベストだ。

グラフィックボードの高額なモデルは確かに性能に優れていること多いが、それより若干ランクを下げた上で、差額分をSSDの資金にするといったことも、トータルでの満足度は高いかもしれない。やはりOSの起動が早い分、Windows Update等で待たされる時間も少ないし、その速さでアプリケーションのインストールで待たされることも少なくなり、快適性が目に見えて違うことがわかるだろう。

グラフィックボードを買う時には、利用目的や予算、他に強化すべき点などを考慮し、ベストな買い物をしてほしい。