こんにちは、餅屋でございます。
前回の記事は「出したアイディアを企画書という形にドキュメントとして落とし込もう」というお話をさせて頂きました。企画書が何故必要なのか、どういう効果を期待できるのか、どのように書いて行けば良いのかをお話しさせて頂きました。
その過程で「アイディアから企画書」へ具体化し、ドキュメント化することが出来たかと思います。ひとまず、屋台組まではできた、というべきでしょうか。
さて、企画書を作り終えたからと言ってまだ事務仕事が終わったワケではございません。作業に着手する前にまだまだやることが溜まっております。その山のようにたまったタスクをどう消化していくのか。トラブルが発生しても、対応するだけの余裕をもって作品を制作していけるのか……同人に限らずありとあらゆる分野での天敵である「スケジュール」の立て方は、制作進行の腕の見せ所ともいえるでしょう。
今回の記事では、そんなスケジュールを立てるにあたって必要不可欠な「タスクの洗い出し」についてご紹介します。
しっかり組んだスケジュールがいつの間にか遅れてしまう理由
前回までのお話で、企画についての大まかな流れや中身については決まりました。今度はそれをどうやって「完成」させるのかという、詳細な工程について決めていかなければなりません。
企画書を書いている段階では、「やるべきことは漠然と頭に浮かんでいる」状態だと思われます。例えば、「ゲストに曲制作を依頼する」「ジャケ絵を依頼する」「マスタリングする」「印刷所を手配する」といった各タスクの大まかな工程は思いついている事でしょう。
趣味の範囲ですからこの状態でも作業に移れないことはないですし、慣れている人であれば概ね問題はないとも言えます。しかしながらこの状態でスケジュールを作ってしまうと、「子供のころに夏休みに学校で書いた計画表」のようになり、途中でスケジュールそのものが意味を成さない形になり、あまつさえ遅延やアクシデントが起こった際に期日を過ぎ、CDが間に合わないという事態を招きかねません。
そういった事態になると、締め切り前に「修羅場」が発生し、徹夜で制作作業を行って体力を消耗してしまうことになります。
こういった事態が起きる理由は、大きく分けて2つあるといえます。
1つ目は、タスクの洗い出しが不十分であること。やるべき作業を見落としていて、「これもやらなきゃいけないんだった!」と慌ててやった経験はないでしょうか。こういった「想定外の作業」は、時としてスケジュール上の致命傷になり得ます。
2つ目は、「スケジュールに余裕がない」ことです。想定外の事態が起きたときに対応するだけの余裕がなく、一箇所で起きた遅れがどんどん蓄積していくことを指します。
どちらも耳が痛くなる話だと思います。こういった事態を回避しながら制作を進めるには、どうすれば良いのでしょうか。
漠然とした「やるべきこと」は具体的な「作業」まで落としこむ
前述のような事態に陥らない為には、大まかで漠然とした「タスク」をもれなく洗い出し、細かく具体的な作業に落とし込み、必要な日数をきちんと吟味しておく必要があります。
その一方法として、今回は「作業分解」をまずお話させていただきます。
説明に移る前に、文中では下記の言葉をこのように定義させて頂きます。
- 「工程」:大きなイベントの分類。この工程内に小さな作業が順番通りに並んでいる
- 「作業」:工程内に含まれている小さなイベント
作業分解とは、大まかで漠然とした、あるいは長くて複雑な「工程」を「具体的にどういう順番でどんな作業を行うのか」ということをはっきりさせる状態にする事を指します。
例えば、「きつねうどん」を作る工程を考えてみましょう。
「うどんを茹でる」「出汁を作る」「具材を用意する」「盛り付ける」など大まかな工程は思いつきます。先ほども言った通り、この状態では工程の大まかな内容はわかりますが、詳細な作業と手順は現時点では見えてきません。
そこで、以下のように工程を作業に細分化していきます。
このように工程を分解することで、1つの工程で行う作業内容を把握することができます。
この作業分解を行う時には、以下の点を守るようにしましょう。
- 1つの作業は単純であり明確であること
- 作業項目の書き出し中に「いるいらない」の判断をしない。書き出し後に選別すること
- 作業に漏れがないか、実際の工程をイメージしながら念入りなチェックを行うこと
この3点を気にして頂ければ、複雑な作業をより簡単に、そして正確に把握することが容易くなります。それにより1つあたりの作業量も見えてくる為、より綿密なスケジュール設定が容易になり、万一の作業漏れといった事故が起きにくくなることも期待ができます。
故にこの「作業分解」が出来るかどうかで、スケジュール管理ないし今後の作業が難しくなるか簡単になるかを分けるポイントともなってくるのです。
分解した作業1つあたりの時間を把握する
「作業分解」で1つの工程における細かな作業を把握したら、次は「作業1つあたりにかかる時間」を書き込んでいきます。
例えば、「10曲1枚のCDを100枚焼く」という作業を分解すると「資材を発注する」「CDラベルをデザインする」「CDラベルを印刷する」「CDをライティングする」「エラーチェックをする」という作業に分解できます。分解した作業にそれぞれ「どれだけ時間がかかるか」を今度は書き込んでいきます。
今回は最低の値を「0.5日」として考えて作業にかかる時間を下記のように確認していきます。
- 資材を発注する :3.0日
- CDラベルをデザインする :0.5日
- CDラベルを印刷する :1.0日
- CDをライティングする :0.5日
- エラーチェックをする :0.5日
ここで書き込むのは「時間」であって「期限」ではありません。期限がここなのでこのくらい……ではなく、「自分が作業を行うとしたら、これくらい時間がほしい」という見込みで時間を設定するようにしましょう。
もちろん、過去にすでに実績があるのであれば、実績に基づいた時間を記入して頂ければより正確なプランを作ることができます。
さて、先ほど書き出した「1つ当たりの作業時間」を合算すると「10曲1枚のCDを100枚焼く」という工程は、順番に作業すると5.5日かかることが分かります。もちろん、一部の作業を並行で実施できるのであれば、それを含めた日数を設定してやることで工程の所要時間の削減も可能です。
このように分解した作業の1つあたりにかかる時間と、1つの工程としての作業にかかる時間の両方を把握することができ、短縮できる箇所はないか、本当にこの作業が必要かなどの評価と選別をすることができます。
ここまでのまとめ
ここまでで、タスクの洗い出しと、1つの工程と作業にかかる時間を把握するということをご説明いたしました。この過程でしっかりこれから行う作業を把握していただければと思います。
このタスクの洗い出しと時間把握がうまくできていない場合はスケジュールの破綻を招く可能性がございますので、今回の記事でタスクの洗い出しと時間把握を行われている方は今一度、再チェックをお願い致します。
さて、タスクの洗い出しと工程・作業に必要な時間を見積もったところで、今度は実際に作業スケジュールを立ててみる段階に入ります。
全ての工程を繋ぎ合わせたとき、最短でどの時間で完成する事ができ、トラブルが起きた際どれだけ遅れる事ができるのか。
また、1つの工程にどれだけ余裕を持たせることができるのか、把握しやすいスケジュールの記載方法についての考え方など、やることがかなり多いですがそれらに触れていきたいと思います。
※更新は9月23日、または30日を予定しています。