カメラなんて必要ない、スマートフォンで十分だ。
時折訪れる家族旅行。今回は3泊4日の旅で、普段より少し遠出をすることになった。
旅行に行ったときに記念写真を撮るのは、その内容や方法に大小あれど、万人に共通する営みだろう。
「今回はどんな写真を撮ろうか」……私も、そんなことを考えていた。2016年2月のはじめのことである。
近年は、スマホのカメラがかなり高性能化している。別でデジタルカメラを持つなんて、カメラ趣味の人間がやることだ。私はそう思っていた。
今回もスマホで写真を撮れば良い。自明である。
ーーそう考えようとしていた。
苦々しいクリスマスの思い出
しかし、昨年のクリスマスのことが頭をよぎる。
その日私は、普段通らない住宅街で、たいへん綺麗なクリスマスイルミネーションを目にした。
通りに面した住宅の壁一面に、星空を模したLEDの数々。時折頭を覗かせるクリスマスツリーも、しっかりライトアップされている。とても幻想的な光景であった。
こんなイルミネーションは今までに見たことがない。これは、記念に撮っておきたい。
私はいつもどおり、スマホを手にとり、住人の承諾を得て写真に収めようとした。
だが、その写真は、ろくなものではなかった。「雰囲気が出ない」のである。
撮った写真は、全てノイズまみれか暗いものばかりで、どれも写真として成り立っているとは思えないものだった。
結局、寒空の下で試行錯誤を繰り返しても、思うような「雰囲気」は出せず、その素敵なクリスマスイルミネーションを、私は納得の行く写真として収めることができなかった。
「これがスマホの限界か………」
昨年の私は痛感したのだった。
日光東照宮で撮影するためのカメラを探す
――さて、今回はあまり機会のない遠出だ。目的地は、日光東照宮。初めて訪れる場所である。
東照宮はもちろんのこと、道中含め、貴重な光景を写真に収められないということがまた起きては困る。
このとき、私の中の「カメラ」のイメージは以下の二つ。
- 「分厚く、重く、ゴツくてその代わり写りは良い」
- 「薄く、軽く、その代わりスマホと大差がない」
というもの。
それでも、スマホ写真にかなりの限界を見出していた私は、「今回の旅では、きちんとしたカメラを準備しよう」と、ぼんやり考えていたのである。
クリスマスの二の舞はごめんだ。
ヨドバシカメラで実機を触る
とはいえ、どのカメラを調達すれば良いのだろうか?
分厚くてゴツい旧来のレフ機は、荷物がかさばるということもあり、あまり魅力的には見えない。小型軽量のデジタル一眼レフもあるにはあるが、性能対価格などを考えると、あまりパッとしない印象を受ける。
一方で、ミラーレス一眼というカメラの種類があることを知る。これは、一眼レフとコンデジの良いとこどりをしたようなもので、一眼レフと同じようにレンズを交換でき、画質もよく、値も張らない部類だ。なにより、本体が軽量なのが魅力的である。
そんなことから、まずは候補を「コンデジかミラーレス一眼」に絞ることにした。
だが、素人の私がネットで仕様を読んだだけでは、その意味をおおよそ理解できるわけもなく、実写レビューなどを見ても素人目にはピンと来ない。
「それならば」と赴いた先は、カメラを基軸に全国チェーンを展開する大型家電量販店――ヨドバシカメラだった。
実機を眺め、手に触れる。仕様表からは見えてこない重量感や持ちやすさ、「触り心地」「馴染みやすさ」といった、五感に訴えかけてくる要素も含め、機種をゆっくり吟味することができた。
ミラーレス一眼への傾倒
今思えば、ここが一つのターニングポイントだったのだろう。
何枚か写真を試写させてもらい、スマホとの比較を行うと、やはり「スマホでは表現できない部分まで写る」ということが改めて実感できた。
また、当初の「今のコンデジなら十分良い物が撮れるだろう」という考えも、「折角ならばより良い写真を撮ろう」、という考えに変わり、私はミラーレス一眼カメラに候補を絞り込んでゆくのであった。
ソニーか、オリンパスか
ミラーレスと一口に言っても、メーカーや機種はたくさんある。
富士フィルムは交換レンズの種類が未だに少ないし、パナソニックは予算が合わない。ニコンは軽くて小さく理想的なシステムだったものの、交換レンズの種類に乏しく、同様の理由でキヤノンも除外せざるを得なかった。私にとっての選択肢は、ソニーかオリンパスに絞られた。
その2つで比較検討を進めるが、どうしても尻込みしてしまう。どちらも魅力的なラインナップなのだ。
あれこれ悩んでいるのも時間がもったいないので、私は再びヨドバシカメラに赴き、顔なじみの店員に意見を求めた。。
店員から勧められたのは、オリンパス E-M5 Mark II 14-150mm IIレンズキットであった。このカメラは強力な手ぶれ補正を備え、初心者でよくありがちな手ブレによるミスショットを防ぐことが可能で、防塵防滴仕様により、天候を選ばずに使うことが出来る……といった旨を説明された。
説明を受けているうちにだんだんと物欲を刺激される。さすが家電量販店トップの売上高を誇る企業の販売員だ。
だが、私は欲望に打ち勝った。ヨドバシカメラから無傷で退店したのだ。
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